新時代のお風呂

Shutaro Takimoto
14 min readDec 24, 2023

みなさんこんにちは、タイパー労働部の瀧本です。

本記事はタイパー Advent Calendar 2023 25日目、トリ記事なわけですが、全然タイピング関係ないです。ごめんなさいね?

さて、世は大コロナ禍 AND with コロナ新時代。

おうちの中で過ごす時間が増えました。

各位、巣作り子作りまちづくりに励んだことと思います。

インドア派にとって、おうちの可能性は無限。

ただ、そうはいっても我らは狭小島国の民。

部屋が足りませんね。床面積が足りませんね。お金も足りませんね。

街に出れば息苦しく。家に帰れど息苦しく。

苦しくたって叫び声すらあげられない。

ああ抑圧、抑圧、抑圧に次ぐ抑圧です。

しかし人は、そうやって追い詰められた時にこそ。

知恵を絞り工夫して、文明を切り拓いてきたのかもしれませんね。

私も、無機質なコンクリートのワンルームの中。

叫び出しそうになり。

いよいよ限界を迎え。

——そこでひらめいたのです。

「使っていない部屋がひとつ、あるではないか」

と。

この部屋です。

この部屋は、沐浴を行い身を清めるための場所として知られています。

旧時代におけるその名は——お風呂

特にこのタイプは、1014 サイズのユニットバスと呼ばれます。

しかし、世は大コロナ禍 AND with コロナ新時代。

家にこもり、人に会わなくて良い。

それなら、この部屋の用途は変わってきますよね。

知恵を絞り工夫して、新たな文明を切り拓きましょう。

まずこのバーですが、なんでしょうねこれは。

新時代のトレーニンググッズ(懸垂用)たりえるでしょうか。

いいえ、強度不足です。

このバーは新時代にはついてこられない。

そう判断せざるをえません。

さようなら——。

普通に一般的なご家庭のドライバーで外せます。

でもこの部屋には、まだ一本、バーが存在しています。

あるいは、このビッグ・ブラザーならば。

新時代のトレーニンググッズ(懸垂用)たりえるでしょうか。

いいえ、強度不足です。

このバーは新時代にはついてこられない。

そう判断せざるをえません。

さようなら — — 。

普通に一般的なご家庭のドライバーでねじを外し。

両面テープもはがします。

君がいなくなった部屋はがらんとして。

——いや、左に何かいますね。

これが何かわかるでしょうか?

旧時代において、シャワー・ヘッドを支えていたものです。

ゆっくりおやすみ。

もうシャワー・ヘッドを支えなくてもいいんだよ。

君は、自由だ。

ぷにっとしたキャップを抉り出し。

あとは普通に一般的なご家庭のドライバーで外せました。

それにしても——なんという無駄な設備の数々でしょう!

旧時代において、沐浴という行為がいかに重視されたかが伺えます。

たとえば、この鏡。

沐浴を行う際に、自らの裸体を観察するのでしょうか。

嗚呼ッ! 気持ち悪い!

「他人からどう見られるか」

そればかり意識して社会との協調を重んじた旧時代から。

「自分が何をやりたいのか」

新時代へのパラダイム・シフト。

時代を象徴する出来事が今、私の目の前で起こっています。

ほらァ汚い!

これが「他人からどう見られるか」重視の末路です!

鏡見て人の目気にする暇があったら、本当の自分を見つめなさい!

本当の自分を磨きなさい!

このカビキラー®でな!

ウオオ新時代!

「こすらず落とせる」とかいう売り文句。

大嘘だと思ってましたが、ガチです。

本当の自分と、出会えたね。

しかし旧時代お風呂として使われた傷痕はなお深く。

ここで絶望的な強度をもって牙を剥いたのです。

彼奴の名は、カラン。

旧時代のお風呂機能の実質的な主戦力であり。

冷水と温水を任意のバランスで混合するのみならず。

その混合物を蛇口とシャワー・ヘッドへ自在に振り分けるという。

また給水管の高圧に耐えるため、各部が強力に固着されており。

安易に封印を解けば、とめどなく水道水が溢れ災禍をふりまく。

新時代を切り拓かんとする我々の越えるべき、大きな壁です。

でも大丈夫。攻略法があります。

水道には元栓があるため、そこで水の供給を絶ちましょう。

あとは一般的な水道工事業者のご家庭にあるこちらの武器。

ウォーターポンプ・プライヤーがあれば倒すことができます。

このように首根っこをホールドしてテコの原理で。

吐水王カラン、此処に墜つ。

しかし作者心理的にはこの手の強敵キャラというのは引っ張りたい。

せっかく頑張ってページ割いて描写したので投資回収したい。

故に「子」「分身」「弟子」「種子」等が残る展開があるある。

今回でいうと、こいつら二匹です。

邪悪な見た目をしていますね。

まあ、手で回せば普通に取れるんですけど。

でもさらに、汚い穴が残ります。

これを封印するための展開で、さらに一巻は話を引っ張れる。

コスパがいいですね。

知識ゼロで戦うと元栓開けたとたん水が漏れて、苦戦します。

しかし水道工事業者パーティはちゃんと封印する手段を用意している。

名を止水プラグという。

でもこれ単体ではダメ。

さらに止水テープと組み合わせての強化を要します。

聖女(俺)が祈りを込めてテープをプラグに十数回転分、巻きます。

これでようやく、カランの残した厄災を完全に封じることができる。

まじめに新時代を切り開く聖具っぽい見た目ですね。

長い戦いの終幕。

だが見渡せば、残されたのは荒れ果てた大地のごときこの風景です。

この凹凸、手に余る。

これではお風呂です。

これではお風呂のしがらみから解放されたと言えない。

土木作業が始まります。

給水経路を潰したことで、この足元の排水溝もお役御免。

いまや、下水の臭いを汲み上げるだけの地獄の穴なのよ。

臭いものにフタ。

パテ埋め作業には造形美が求められますね。

これはギリ赤点。

旧時代のお風呂に詳しい諸氏であれば、こう考えているかもしれません。

「バスタブはどう処理するんだ?」

と。

せっかくここまで読んだのでしたら、覚えておいてください。

臭いものにフタ。

これは素人 DIY においてかなり万能な方針です。

このように、サイズを合わせた板を用意します。

薄いものは割れる危険があります。

ここでは構造用合板ネダレスの 28 mm をチョイスしましたよ。

木造戸建て住宅の床下に用いられる部材です。

一人乗っても大丈夫。

床下部材ですから、それはそう。

でもこれじゃあお風呂ですよ。

お風呂というかサウナ感が出てきてしまった。

我々が求めている自由は、未来は、木の温もりからは得られないんだ。

というわけで遮音・防振材で覆ってしまいましょう。

かつての偉人は言いました。

「男は黒に染まれ」と。

わたくし、至言であると思っております。

染まってきただろう?

革命の日は近い!

大地も染め上げていきましょう。

床材を召喚!

……と言ってますが、一枚一枚ホームセンターでカットしてます。

自分で切ってもいいんですが、ホムセンのカットサービスが優秀です。

mm 単位で指定できて 1 カット 50 円とか 100 円とか。

その加工精度があれば、この通りでございます。

なぜかナナメっててざらざらした旧時代の床は消え失せました。

さあ、染め上げようじゃないか!

おいでっ、タイルカーペット!

……と言ってますが、カットしてぴったり敷くのは地味に面倒です。

ここでやや前後するんですが、邪魔者の存在に気づいてしまいました。

バスタブの側面の、この子です。

何これ?

ボケでなくまじめに存在意義がわかりません。

石鹸とかシャンプーとかをちょっと置けるスペース?

それ要るかな?

とりあえず、新時代には要らないので消えて頂きました。

暗いですが奥に給水管がやや見えてます。

宝物を隠したりするには案外よさそうな隠れスペースですね。

まあ塞いでおきました。

どうせ塞ぐなら最初から取らなければいいのでわ?

いいえ、新時代を切り開くにはこういう冒険心が大事なんです。

バスタブ側面を覆います。

ドリルでネダレス材に下穴を開けて。

木ネジで固定します。

こうして大地は黒の軍勢に覆われました。

感じるなあ! 新時代!

( ↑ だんだん面倒になり、雑になってきた)

これでとりあえず完成、でいいんじゃないか?

もう十分じゃないか?

そういう気持ちもありました。

でも、私は叫びたかったの。

——だから、まだ足りない。

防音性能が、足りない!

ならば、力を貸そう——。

というわけで、これらのキットが登場します。

左上が吸音材(ふわふわ)、右上が遮音材(重たいゴム)。

30 cm 角の正方形のやつが Amazon とかで売ってます。

左下が両面テープ。右下が業務用マグネットシール。

防音室を作るには吸音と遮音を組み合わせる必要があって——。

とかいう一般論は省略だよ。

俺式防音マグネットパネルの作り方を紹介するぜ!

えーこのように吸音材に両面テープをセットしまして。

遮音材を貼り合わせます。

マグネットをカットして、遮音材の裏にたっぷり貼り付けよう。

横から見るとこんな感じで層になりますね。

ここでめちゃくちゃ遠投な伏線回収なんですが、ここはお風呂です。

ユニットバスの側面はマグネットが付きます。

これはアツイ。

きっちりタイルで敷き詰め可能な上に、容易に着脱可能!

ただし——

このパネルを 100 枚製造できればですけどね!?

一人では無理!!!!!!

(と思ったのでヘルプを呼び、手伝って頂きました。感謝)

並べていくとこんな感じで。

ちょっと格子配列キーボード感がありますね!(←タイピング要素?)

とにかくパネル量産がつらい!

つらいので現実逃避に天井に手を出しましょう。

割とレガシーなユニットバスでしたので、点検口と換気扇がこのように。

このあたりは部材によって仕様がまちまちかと思われます。

この子は雑にひっぱるとこのように伸び、カバーを外せました。

換気扇がネジで固定してあります。

取りましょう、我らの願いのために。

点検口から中を覗くと、このように排気ダクトがつながれています。

住宅の設備の裏側、意外と雑かつシンプル。

はい撃破。

このアルミダクトはほぼダイレクトに外につながってるようでした。

耳を近づけると外で鳥がちゅんちゅん鳴く声が響いてきます。

そこにアメリカ製品のマイティパワーを注入しましょう。

強力なダクトファンです。

ユニットバス備え付けのゆるゆる回るやつとは違うんですよ。

焼肉屋で排煙したりできるやつです。

権力・資本力・暴力を適宜用いて新時代を切り拓くのです。

おっとっとwwww

忘れちゃいけないのが電力と通信網。

ユニットバス内には AC 電源がありませんからね。

換気扇のオンオフスイッチのパネルから通線ワイヤーを立ち上げます。

なおコンセントや壁の中の電気系いじるには電気工事士の資格が必要。

知識なくいじると危険なので注意してください。

壁から立ち上げてユニットバス上部に届けます。

電源タップふたつと CAT6A UTP ケーブルを 2 本ずつ。

新時代を生きるオタク君のインフラが生えてきました。

そして壁面パネルを二人がかりで作り続けること丸二日。

ついにその時が訪れます。

埋まりました。

我らの勝ちです。

ここはもはや、お風呂じゃない。

防音室です。

景気づけに一発いっておきましょうね?

このお風呂感 MAX の電灯をなんとかしましょうよ。

さあ電球姫……こちらへ。

これまで長年の御勤め、ご苦労様でございました。

本日よりここは、我が軍の領地となります。

それに相応しき色に、染まって頂きますよ。

なに、大丈夫、痛いのは一瞬のことです。

すぐに、良くなりますからね?

いっ嫌あああああああああああああああッ!

フハハハハッハハハッハアアハハアア!

私の高笑いする声が響く。

——いや、響かない。

なぜなら。

ここは防音室。

360°が防音材で包まれているから。

静かな、とても静かな空間だから。

とうとう、手に入れたのだ。

自由な、叫びを。

メリー・クリスマス。

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